この度小山登美夫ギャラリーでは、三宅信太郎の新作による個展「ふと気がつくとそこは遊園地だった」を開催いたします。本展は三宅にとって当ギャラリーにおける7度目の個展となります。
今回の作品は、遊園地をモチーフにペインティング、ドローイング、立体作品、またそれらの技法を組み合わせて、ドローイングの額に模様が彫られたり、前面のアクリル板に絵や文字が描かれたり、ペインティングのキャンバス枠の周りに段ボールや粘土の立体を配置したりと、新しい表現が織り込まれています。そんな平面、立体というジャンルが楽しく混在するような、三宅の自由で強烈な作品世界を展開いたします。
【三宅信太郎について】
三宅信太郎は1970年東京生まれ。1996年多摩美術大学絵画科版画専攻卒業。現在も東京を拠点に活動を行っています。
三宅は、ドローイング、ペインティング、立体、厚紙や木にドローイングを描いて型取りした「切り抜き」、自身で制作したコスチュームや着ぐるみを着てのライブドローイング、パフォーマンス、映像など、様々な表現形式を自由に取り混ぜ、機知に富んだ独創的な世界観をつくりあげてきました。
ひょろ長い手足の人物、動物、想像上の生物や世界、食べ物、建物などの光景を、なめらかな描線と豊かな色彩、文字の書き込みなどで密度濃く表現し、その多様で楽しい作品は世界各地で鑑賞者を魅了し続けてきました。今まで国内のみならずイタリア、オーストリア、ベルリン、台湾など世界各国で個展を開催しています。(主な展覧会歴はこちらをご覧ください。http://tomiokoyamagallery.com/artists/shintaro-miyake/#artist-biography)
作品は、アストルップ・ファーンリ現代美術館(ノルウェー)、キステフォス博物館(ノルウェー)、グギング美術館(オーストリア)、ジャピゴッツィコレクション、ルベルファミリーコレクション(アメリカ)、高橋コレクションに所蔵されています。
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*今回三宅が花柄ランタンに依頼し、本展のためのテーマソング「HAVE FUN」が出来上がりました。
(作詞/作曲/歌:花柄ランタン)
下記よりお聴きいただけます。
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【本展「ふと気がつくとそこは遊園地だった」について】
本展「ふと気がつくとそこは遊園地だった」において、三宅は「人の生死」や「自我への意識」という根源的なテーマを「遊園地」に置き換え、作品として表現しています。
人はなぜ生き、なぜ死ぬのか、ということに対して長きにわたって興味を持ち続けてきた三宅は、大人になった今は、自分の存在に対する自覚があるけれど、いつからそれを認識しはじめたのか?気がつかないうちにいつのまにか自意識や自我が芽生え、まるで「ふと気がつくと生きている」という感覚を持つそうです。
そんな「生きている」ことがなぜ「遊園地」に置き換わるのか。三宅にとって「遊園地」とは、幼い頃の記憶の断片にあるのものであり、心躍るような体験とともに、乗り物に乗って怖いようで楽しいような感覚や、もう過ぎてしまった戻ることのない切ない記憶でもあり、楽しさ、切なさ、時間の経過と、まるで人生の縮図のように感じると言います。
迷路のように入り組みながら前後左右と巡るジェットコースターの線路が描かれた作品「FUN RIDE」は、人生の紆余曲折を表すようでもあり、フレームの外にまで立体的な線路や小さな乗り物が飛び出し、既存の枠にとらわれない軽快さや表現の楽しさも感じさせます。そして、乗り物やお化け屋敷の中のキャラクターが擬人化され、遊園地の乗り物を楽しんでいたり、パラシュートの乗り物が尋常でない数で描かれたり、不思議な描かれた方をされた空飛ぶ円盤の乗り物が、それでも人生は続くというようにぐるぐる回り続けていたり。思わずくすっと笑ってしまうような、現実と虚構が入り乱れた、様々な遊園地のシーンがそこに現れます。
【内的衝動、自由、楽しさへの純粋なまでの追求 – 三宅信太郎のアーティスト性】
三宅作品に関して、東京国立近代美術館主任研究員の保坂健二朗氏は、三宅作品におけるアール・ブリュット、アウトサイダー・アート、フォーク・アート、オーストラリアのグギングの作品からの影響に言及し、次のように論じています。
「(初期の代表作である「スウィートさん」を、)色鉛筆という非プロフェッショナル的な画材によって、内的な衝動を重視するかのごとく、線が重なることを厭わずに描かれた造形としてみれば、グギングに代表されるアウトサイダー・アートとの類似性を指摘することができる。」
(保坂健二朗「三宅信太郎と新しいアプローチ」、『三宅信太郎作品集 アイアムヒア』美術出版社刊行、2018年)
密度の濃い繰り返しの描き方はもちろん、三宅にとってアーティストとして「描きたい」という内的な衝動の重要性は大きなポイントであり、三宅本人も本展に際し次のように述べています。
「精巧さや奇抜さなどの見栄えでなく、何を作りたいのか。手を動かしたい、自分が作りたいものを作りたい」
好きなものに好きなものを、好きな大きさで好きなように描く。既成の方法に縛られず、自身の気持ちを純粋なまでに見つめ、それを表現する。好きということ、自分というもの、生きるということ、アート、人生といった究極的な主題に関して真摯に突き詰め、葛藤を繰り返しながら表現をし続ける。それこそが三宅信太郎というアーティストだといえます。
「(三宅にとって観客が起こすアクションとは、)現代美術によくあるような社会の改善へとつながるそれなどという高尚なものである必要はなくて、欲しいとか、楽しそうだから笑ってしまうといったような、人間としてもっと根源的なそれである。」
「(三宅の2010年代以降の作品は、)現実に対する危機感に根ざした上で、なにかを伝えようとするものになってきている。三宅にそれを描かせることになった理由を考えると複雑な気持ちになるが、彼自身はそれを、怒りや憂いのような感情に変化させることなく、きわめてポジティブな光景に仮託することで伝えようとしている。そこに今日におけるアートの可能性を感じ取ることができるだろう。」
(保坂健二朗「三宅信太郎と新しいアプローチ」、『三宅信太郎作品集 アイアムヒア』美術出版社刊行、2018年)
楽しく時に苦しくも、それでも人生は続く。三宅の作品を通し、私たちは日常つい忘れがちなそんなシンプルなことに気づく幸せを感じられるかもしれません。三宅の最新の世界観を堪能しに、ぜひお越しくださいませ。
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