この度小山登美夫ギャラリーでは、日本での初個展となるサム・フォールズ展を開催いたします。
自然や光、時間、偶然性をもとにしたフォールズの制作プロセスは、非常に特徴的です。
地面に置いたキャンバスの上に草花や枝などの植物と染料を一緒に配して一晩放置し、その後植物を取り除く。その白い跡の重なりがイメージとなり、画面に有機的な自然の輪郭と、生と死の循環のメタファーが満ちあふれます。
日本では今年2023年虎ノ門ヒルズの車寄せの大きな陶板制作や、森美術館「ワールドクラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」に出展し、大きな話題を呼びました。
本展ではペインティング作品と、陶のフレームと写真を組み合わせた新作を発表します。
【サム・フォールズについて
ー物理学、言語学、哲学からアートへ、ファッションとのコラボレーションもー】
サム・フォールズは、1984年カルフォルニア州サンディエゴ生まれ、現在ロサンゼルスで制作活動を行っています。アメリカのリード大学で物理学、言語学、哲学などを学んだ後、2010年ICPバード芸術研究課程修了しました。
主な個展として、2018年「Nature Is the New Minimalism」(トレント・ロヴェレート近現代美術館、イタリア)、アーマンド・ハマー美術館(ロサンゼルス)と立て続けに開催し、第21回シドニービエンナーレにも参加。
今年2023年には「We Are Dust and Shadow」(クリーブランド現代美術館、オハイオ州)、ドリス・ヴァン・ノッテンのロサンゼルスのスペース The Little House でも開催している他、2019年にはルイ・ヴィトンとのコラボレーションでバッグ・カプシーヌのアートプロジェクトにも抜擢、多角的に活躍しています。
【本展および出展作について
ーアートと自然の共作、鑑賞者をつなぎ、生命の存在と儚さを体感するー】
フォールズの作品は、ペインティング、写真、陶、ランドアート、ヴィデオインスタレーションと多岐に渡り、それぞれの分野を融合し、異なる要素を共存させる点が大きな特色です。
ペインティングにおいて、植物を取り除いて現れる白いイメージは、ステンシルや最初期の写真の露光のような手法とも通じています。
また陶フレームの作品は、成形した陶板に草花を並べ押し付け、焼き、植物は灰になり、その形の跡が固まります。そのフレーム内には、同じ草花が生命が宿っていた時に撮影した写真を配置。生命の儚さと自然のサイクルを多層的に表し、また写真は現在では生産発売中止となっているFUJIの大判インスタントフィルムを使用することで、人間の絶え間ない消費をも暗喩しています。
また彼にとって作品とは、アーティスト、自然などの対象物、鑑賞者を繋ぐ役割を果たすと考えています。
フォールズの手によって草花と染料が配置されたキャンバスは、日が落ちた後に月の光に照らされ、露がつき、時に雨、風もはげしく吹き荒み、また日が昇り光を浴びる。初春の雪のおだやかさから、春から夏に向かう兆し、夏の日差しの強さ、その時々の季節の変化や状況が色彩に反映され、またよく見ると作家や飼い犬の足跡がついていたり、時の経過そのものも内包されているようです。まるでアートと自然の共作のようでもあり、またその変化は生命、人生そのものであるともいえます。
森美術館館長の片岡真実は、虎ノ門ヒルズパブリックアート制作にあたり、フォールズの作品について下記のように述べています。
「サムの手法は、人間の力で絵を描くのではなく、風や光や雨などの自然条件が絵を作っているという点がすばらしいと思います。都会の真ん中で暮らす人々に、季節感や自然の味わいをどう感じてもらえるか。ガラスや金属やコンクリートなど硬質なものに囲まれた生活の中に、こうした手の温もりや自然の情景が感じられる作品が必要なのではないかと思っていました。」
(「虎ノ門ヒルズ・レジデンシャルタワーが叶えるアートのある暮らし」HILLS LIFE、2022年)
本出展作の1つ「Petrichor(降雨で地面から立ち昇る匂い)」は大きなペインティング作品で、六本木のギャラリースペースを長く横断するような迫力ある展示になる予定です。
鑑賞者はその実物大の草花の輪郭が重なる作品に圧倒され、森の存在性を体感し、自然との対話をすることができるでしょう。
しかしそれはなにより、サム・フォールズ自身が自然やその生命の儚さを心から楽しみ、慈しんでいるからこそ人々に深く伝わってくるのだと言えます。この貴重な機会にぜひお越しください。
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プレスに関するお問い合わせ先
Tel: 03-6459-4030 (小山登美夫ギャラリー オフィス)
Email: press@tomiokoyamagallery.com
(プレス担当:岡戸麻希子)
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